虫歯の原因菌であるミュータンス菌が脳出血の発症リスクを高めることが、最近の研究で明らかになりました。
口内と脳の病気に関連があるとはどのようなメカニズムが働いているのでしょうか。

統計的にミュータンス菌を保菌している人には出血しやすい傾向があることが分かっています。
人間の体内には出血を起こすと止血作用をもたらす血小板が出血部位に集まって、止血する機能が備わっていますが、ミュータンス菌には血小板の止血作用を阻害する遺伝子が備わっています。
そして血流に乗って体内を循環した細菌は脳にも到達します。
脳内には脳機能維持のために大小の血管が張り巡らされていますが、この血管の内壁にミュータンス菌が取り付き炎症を起こして、脳出血を引き起こす場合があるようです。

ところで脳出血を高める基礎的なリスク要因として、高血圧が存在しています。
高血圧により血管が強く収縮することで血管の内壁にダメージを与えます。
血管の損傷部位を修復するために血小板が凝集してきますが、これは血栓の原因になります。
この状態が恒常化すると脳を含め全身の血管にダメージが蓄積し、血管の内壁はますます狭くなり、一層高血圧を悪化させていきます。
これが動脈硬化です。
脳出血の高リスク要因である高血圧症状を抱えた年代の方では、虫歯に直面する年代とも重複する側面が高いことから、虫歯と高血圧の問題を同時に抱えている方に脳出血のリスクが著明に高まることは明らかです。

ミュータンス菌と脳出血の関連を調べるために男女の唾液を調査した研究によると、4人に1人の割合でミュータンス菌が発見され、MRIで微少な脳出血の痕跡が発見され、ミュータンス菌を保菌しているほど脳出血の痕跡が多い傾向が見られました。
ミュータンス菌を保菌している人は、保菌していない人に比べると、実に14倍以上の脳出血の発症リスクを有していることが明らかになりました。

虫歯は年代を問わずありふれた病気で、多忙を理由に治療が後回しにされがちですが、歯磨きを含めた適切なケアを行わないと、重大な合併症のリスクを有していることには注意すべきです。

虫歯を放置すると菌が脳を侵し最悪死ぬ

しかし虫歯を放置すると、口内ではどのような変化をみせるのでしょうか。
虫歯は進行すると内部に向かって病巣は拡大していきます。
歯の付け根には神経や血管が集まった歯髄という部分がありますが、やがて虫歯は歯髄にまで進行します。
歯髄は周囲の血管や神経を通じて、骨にも繋がっているので、さらに進行すれば周囲の骨や骨髄にまで炎症が波及していきます。

炎症がここまで深刻化すると顎等の顔面の骨の壊死を引き起こします。
顔面の骨は場所的に頭蓋骨に近接しているため、ミュータンス菌が脳内で広汎な炎症を引き起こすと髄膜炎や脳炎を併発し死亡するリスクに直面することになります。

このように虫歯が口内で局部的に炎症が波及するリスクと、同時に血流に乗って感染が全身に及び新膜炎や敗血症など、感染症ならではのリスクの両面があります。

生まれたての赤ちゃんはミュータンス菌を有していません。
虫歯を発症するのは何らかの経路で、両親の口内のミュータンス菌が赤ちゃんに移行することで発症することが知られています。
その意味で虫歯が感染症の一種であることは明らかです。
感染症である以上は血流に乗って全身に伝播し重症化するリスクが常に存在しています。
従って虫歯を放置すれば死につながりかねない細菌感染症と認識を改める必要があります。

とりわけ高齢者では免疫力が低下することで、虫歯が急速に悪化する可能性もあります。
基礎疾患に高血圧を抱えている方も多く、動脈硬化により発生する微少な血栓が血管に詰まることで、血管壁が破れ易くなっています。
そのため、虫歯を抱える高血圧の高齢者では、感染症と脳出血の高いリスクに直面していると考えられます。
従って歯科医での治療はもちろん、日頃の丁寧な歯磨きによって虫歯予防を怠らない姿勢が大事です。